風間農園のカボチャ爆弾(遺稿)

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坂本正治氏を偲ぶ
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事故
Adobe社「INDESIGN」
片翼撃たれたトンビの死
九十九里浜のテトラポット
〈ヨウカイチバ〉へようこそ!
風間農園のカボチャ爆弾
チバラギの「荒地」から
顔のない仏像と日本のマスメデイア

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麻布中昭和三十二期の会報を見て50年前の同級生、風間勉君からはがきをもらった。確か東大法学部図書館を定年退職した後、柏市か流山市にマンションを入手して悠々自適と聞いていたが、こんどは我孫子に野菜畠を開拓して「朝四時起きの晴耕雨読生活」をはじめたらしい。 電話で話しているうちに朝採れ野菜を里山の匝庵へ送ってくれることになった。 風間農園のカボチャを運んで来たダンボール箱は、いつもDVDや古本を送ってくるUK.Amazonのボール箱4〜5倍の大きさがある。 私の仮泊するひょっこりひょうたん島のような里山キャンプ地にはこのカボチャを切断出来るような打ち刃物がない。日本のチベット、厄介千葉の里山暮らしと言っても、○○農業、□□農法も魚など自然回帰農業や農法に特にこだわりがあるわけではない。 ひょうたん島で使用される食糧はすべて1回分ずつプラスチック・パックされ、トースターや電子レンジで調理されている準宇宙食。ひょっこりひょうたん島乗組員サカモトマサハルは風間勉君のような意志強固な熟年開拓人とは事異なり食料は他給、すべてコンビニ弁当やスーパー惣菜部に依存している。 風間農園のカボチャは、特に濃緑色の表皮が恐ろしく固い。 こんな巨大な野菜を調理するためには、しかるべき厨房と調器具とそれなりの覚悟が要る。 だがすべてはこのカボチャ爆弾が破裂した後初めて思い知ったことだった。 最初から全部を料理しようとすると大変だからまず4分の1だけという隣の寺本農園の奥さんのアドバイスを受けて、4分の1を最初に草刈鎌で切断、解体したところまでは無事だった。 だが、その日のうちに消費しきれない残りものだけでも大量である。それを格納する冷蔵ケースがない。 その一部をスライスすることさえ手もとの料理包丁では困難を極める。敷地の端に臨時にしつらえた調理台は転覆し、カボチャスライスの大半がとなりの田んぼのあぜ道に散乱した。 何しろ料理人は、足元の定まらぬ軽度心身障害者ゆえ、簡単には拾い集められない 田んぼのあぜ道にカボチャの破片が散乱しても、稲作には差し支えあるまいという勝手な理由で放置したまま作業を続行手造り料理の冗長な手順に踏み込んだ。 タマネギのみじん切りをバターで炒め、あらかじめ、スープストックを溶いた水で水炊きしたのち炒めようという心積もりであった。 味見すると、一応その意図は実ったように思われたが、グルメ道への扉が若干でも開きかけると胸騒ぎがする。 これだけ手間をかけた料理を味わうとcocosの朝食膳やコンビニ弁当が食べられなくなるではないか。 古代印度哲学、唯識派の世界観#阿#あ##頼#ら##耶#や##職#しき#の極みを辿りたい深層宇宙飛行士が、美食にかかずらって良い訳はない。いや、そんな余裕はここ匝瑳の里山キャンプにはない。 カボチャ爆弾の一片を軽く焼いたトーストに乗せて味わうと、これぞ超絶味覚天国の地獄極楽。青春時代熱読した文豪ゲーテの長編詩「ファウスト」の一節を想起した。 何 ゲーテなど読んだことがないって? それなら初期手塚治虫先生の長編漫画「ファウスト」の初版本でもひもといてみたまえ。 そうすれば森林太郎先生訳岩波文庫の「ファウスト」上下二巻を読んでみたくなるかもしれない。 長編詩のどこに、メフィストーフェレスにすすめられて、ファウスト博士がカボチャを試食するシーンがあるのか、って? さあそれはちょっとチガウんだけどねえ、 がどこにあったかなかったか、それくらい自分で探しなさい。