モンゴル

ロシアのウランウデの町から南下して、私たちはモンゴルへ向かった。ロシア(キャスタ)の出国ではウラジオストックで苦労して手に入れた車のロシア通過証明書をいとも簡単に没収されてしまった。私たちのロシアビザはマルチ入国ビザだったので、ウラジオストックのセルゲイ君は、「この書類は大切なので、一回目の出国のときに渡さないように」と言っていたのである。再入国のときにも同じ苦労は絶対したくなかったので、係官に食い下がったのだが、ダメ!。仕方なく、そのコピーを取ってもらい出国となった。出国の手続きは基本的にはスタンプと車の積載物の検査だけなのだが、やたらと時間がかかった。あれこれと興味本位に調べられ、車の下側まで調べるのである。それも複数の係官が同じことを繰り返したりする。じっと忍耐の「レット・イット・ビー」である。

そしてモンゴル入国。係官がモンゴリアンに変わるので、何となく親しみは覚えたのだが、同じような人種の旅行者だからといってそう易々とは終わらなかった。またまた興味本位にあれこれと調べられた。係官の男は昼間から酒を飲んでいるらしく、クドクドと積み荷を開けさせる。使う可能性の低い部品などは奥の方に積んであるのだが、次から次へと見せろ、見せろの連続にうんざり。自動車保険に入るために、ドル払いで保険証を発行してもらったのだが、後から別の男がそれを調べて「どこでどんなお金を払ったのか」と聞いてきた。そしてドルを返され、モンゴルの金で再度支払いをさせられた。どんな理由があるのか私には正確にはわからなかったが、保険を売った女係官がドルを受け取ることが悪かったのだろうか。


ロシアからモンゴル(ウランバートル)へ多量の燃料を運ぶ列車。

モンゴルへ入ると目に見えて林や立木が減りはじめ、しばらくすると、木の姿を見つけるのは難しくなる。そして一面の草原である。
7月には草原に花が咲き乱れている。ブレて写っているのは蝶。

道路はロシアと比べると良くなったように感じるのは、車が少ないせいかもしれない。(舗装路面は似たようなものである)
ウランバートルへのドライブは快適で、天候に恵まれれば広い空と明るい草原を満喫できる。

ウランバートル周辺には、山と呼べるほどの高山は少なく、ともかく広い空と、なだらかな丘が地平線まで続く風景であった。

ウランバートルでは、比較的いろいろなものが揃えられるし、おいしいものも食べられる。ロシアで盗まれてしまったクッキングコンロもアメリカ製のものを買うことができた。ただし日本で買うのと変わりのない値段で、ほかの物価と比較すると相当に高価な買い物になってしまった。とは言っても私たちはキャンプの連続なので、絶対に欠かせないものであった。

道路脇で「馬乳酒」を売っていた女のパオ。このアンテナと小さな風力発電用のプロペラが何とも不思議な組み合わせに見えた。いまでは金銭的な余裕さえあればテレビも普及している証拠だろう。しかし、移動してしまうパオのために電線を引くこともできないだろうから、電気はどうしているのだろうか。まさかこの風力発電で受信はできないだろうと思われた。
馬乳酒は私にはおいしかった。でも実際には毎日の食事がこの馬乳酒と山羊乳のチーズのようなものがふつうで、野菜はほとんど取らないと言われているから、何日も彼らと同じ食事で暮らすのはきついことだろうと思う。
モンゴルでは草原の中によくパオを見ることができるが、道端から遠いところに設営されていることが多いのと、ほとんどの家庭では番犬を飼っているので、犬を嫌いな人には近づくのは難しいかもしれない。どの犬も凶暴というわけではないが。
日本人がツアーで訪れるパオは観光用に契約されているところが多いので、本当のモンゴル人の生活を知るというわけにはいかないだろうと思われる。

 

 

 

ウランバートルを中心に900kmほどのドライブをしたときの写真。草原の白馬、羊を追う男。
モンゴルでは識字率が高いらしく、子供は学校に行くために一旦パオの草原から知り合いや親戚のいる集落や村、町の知り合いのところへ送られ、学校へ行くそうである。学校が終わるとまたパオの生活に戻ると聞いた。近年では、放牧の生活から給料生活者になる人や都会に出ていく人も増えているが、都会から離れたところにはまだ昔ながらの生活をしている人々がたくさんいるようである。
ハルホリンの山の中でキャンプをした時、雨模様の山懐で私たちのところを監視に来たのか好奇心で来たのか、馬に乗った若者がやってきた。言葉は通じないし、何の会話もできなかったが、しばらく私たちのキャンプの様子をじっと眺めていたのを思い出す。その素朴な表情からは想像できない優雅な仕草で馬を乗りこなし、谷を下り、向かい側で雨にかすんだ遠いパオの方へ戻っていった。そこにはパラボラのアンテナも発電用プロペラも見えなかった。低い雲に覆われたその山間の草原を、青空の時とうって変わってしっとりとした静寂が包み込んでいた。雨を何よりも大切なものと考えるモンゴルの人たちの願いがあたりを覆っているような静かな雨だった。

車の一時輸入について

車でのモンゴル入国は特に面倒な書類は必要ない。国際登録証があるだけで十分であった。
私は車で入国するときには必ず自動車保険に入るようにしている。たとえそれが強制的でなくとも安全のためである。モンゴルでも入国の事務所で保険に入るかどうか聞かれた。金額は国によってまちまちで高い国もあれば驚くほどやすい国もある。
この保険に入っていたことで救われたこともある。アルジェリアで追突事故を起こしたときのことだが、相手は保険証の番号を控えただけで、壊れた車のまま何も文句も言わずに立ち去ったのである。

道路状況

私が持っていった道路地図にはない新しい道路が出来ていた。土地が広いからだろうか、あるいはただ同然だからだろうか、(土地所有などという概念がこの国にあるとは思われないが)新しい道は限りなく直線に近く作られているし、あたらしい道路は表面の処理や平滑性も良好で走りやすい。
ただし幹線をはずれると道はピスト(踏み分け道のことで、通った人がいつの間にか作った道筋であり、馬や羊の通り道と自動車の通り道とは分岐したり合流したりする)同然になることが多い。 雨でも降るとぬかるむし、いくつもの道筋があるので、注意しないとあらぬ方向へ行ってしまうこともある。地形と勘を頼りに進むことになる。
いまではGPSがあるので大きな間違いは起こしにくいだろうが、あくまでも地形と位置、方向をよく考えて走ることが必要。

車について

給油場所は多くはない。また町が少ないので、予備を持っていた方が安全。

ホテルと宿泊

私たちは基本的にキャンプをしてきたので、詳しいことはわからない。ウランバートルでは、「あずまや」という日本人経営のゲストハウスに泊まった。
車の駐車は、路上では危険だと思われる。囲われていてガードマンのいる駐車場に止めるのが安全。

道路検問

いくつかはあったような記憶があるが、ほとんど面倒なことはない。

国境

大きな出入国国境は、北のロシアのキャスタと南の中国とのザミンウデ。
車やバイクでの中国への入国は無理(出来れば奇跡的!)。中国が近隣諸国以外の外国旅行者に車などで入域を認めているのは「ウイグル自治区」「チベット自治区」の2つだけである。中国への車での入国に関しては中国の頁に書くつもりでいます。
ほかに、ウイグル自治区へ直接入る非常にマイナーなルートはあるが、中国側でこの国境からの入国を許可するかどうかによって決まるので、詳しいことはわからない。また、モンゴル西端からロシアへ抜けるルートがあり、これもマイナーだがロシア側のビザがあるならば可能。(イギリス人が逆ルートで通っている。)

 

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